柘榴

 固く詰まった繊細な内容物に気を遣いながら半分に割ると、顔を覗かせるのは無造作に群れ固まった赤い細胞質の塊。
どことなく弾けた肉を思わせるその果実は、
毒々しいくらいに澄んだ赤黒い色を見せていたのだけれど、
口に含むと清涼な甘酸っぱい水が零れてきて、
なんとなく昔食べたあの味とは違うな、と残念に思ったのでした。


 こんな猫の頭ほどもある大きいものじゃなくて、もっともっと小さいあのみすぼらしい柘榴の味が、なんとなく懐かしくなりました。



 本当に人の肉を思い起こさせるくらい深く赤く熟れているのに甘さの欠片すら感じられない、
 決して商品化されることのないだろうあの果実。
 熟れて弾けた柘榴の、繊細なまでに潰れ易く、涙が出るほど酸っぱい、どこまでも人を拒絶するようなその味に愛着と親近感を感じます。




 ……実りの秋です。